かあさんは魔女じゃない
かあさんは魔女じゃないかあさんは魔女じゃない
ライフ・エスパ・アナセン 木村 由利子

偕成社 1979-09
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母親を亡くし一人ぼっちになってしまった少年エスベンを助けてくれたのは世捨て人ハンスでした。美しいフィヨルドの自然の中、ハンスとの静かな暮らしは、エスベンが目の前で見た恐ろしい出来事を忘れさせてくれるかに見えました。しかし、その暮らしも奪われるときがきます。



「おびえる人はよりどころを求める。そして、なんにおびえているのかわからないときはおびえの元を見つけなければいられなくなる」
人は不安なとき何かにすがります。ところが、それでも不安がなくならなかったり、改善されなかったとき、今まで自分を助けてくれていたその人さえもその原因に仕立て上げようとします。
人間の心の奥底のある弱さ。その犠牲になる罪もない善良な人々。なんて哀しいんだろう。なぜ人はおびえるのだろう。なぜ信じられないのだろう。
そんな人間の弱さが罪もない人々を巻き込んだ無意味な戦いにつながるのかもしれません。自分が弱いから相手を攻撃する。その弱さを認めて受け入れない限りこの世から悲惨な争いはなくならない気がします。



(はじめにこの文を書いたのが9月11日でした)
【2007/09/30 19:49 】 | 児童書 | コメント(0) | トラックバック(0) | page top↑
先生のわすれられないピアノ
先生のわすれられないピアノ―45年目によみがえったピアノの話先生のわすれられないピアノ―45年目によみがえったピアノの話
矢崎 節夫

ポプラ社 2004-06
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先生のわすれられないピアノ        
ー45年目によみがえったピアノの話ー



これは、1台の古いグランドピアノのお話です。
このふるいピアノが処分されようとしているのを知った、元小学校の先生がそれまで心の中にしまってきた思い出を初めて語ったのでした。



このピアノが小学校に贈られたきっかけは、初めは一人の音楽好きの先生でした。
「子供達に歌を歌うことの喜びと、音楽の美しさ、楽しさを教えてやりたい」
この先生のおかげで子供達の目は以前よりもっと生き生きと輝くようになったといいます。そんな子供達のために町の人々はお金を出し合い一台のグランドピアノが贈られます。それはまたもっと素晴らしいものに買い換えられるのですがそれがこの本に出てくる「フッペル」という素晴らしいピアノでした。



そのピアノの係になり大切に大切に守ってこられたのがこの本に書かれている上野先生です。彼女もまた音楽が大好きでした。



ある日二人の特攻隊のお兄さんが小学校にやってきます。「死ぬ前にもう一度思い切りピアノを弾きたいのです。」と。明日出撃するという二人はピアノを探して線路に沿って12キロも歩いてきたのでした。そして弾いた曲がベートーベンの「月光」でした。二人の青年は弾きおわると見送りの子供達に「君達が大人になるまでこの国を残すために自分達は死ぬけれど、みんなはいい子になって、やがてこの国を立派な国にしてほしい。君達のお父さん、お母さんが悲しむことがないような国に」というようなことを話したそうです。その後その青年がどうなったのかはわかりません。でも、もう一度あのピアノを弾きにくることはなかったのです。



「月光の夏」という映画にもなったお話です。最近実際にこのピアノで弾いた「月光」のCDがついた本もあるようです。



私も少しだけれどピアノを弾きます。子供達に音楽を教えてもいます。だから、このお話は何度読んでも泣けてしまいます。



音楽を愛する人々。子どもの幸せを願う大人たち。そして美しいものを素直に美しいと感じられる子供達。その全ての人々を傷つけ苦しめ悲しみだけを与える戦争。自分の幸せをあきらめ、故郷とそこに住む人々を守るために死んでいったたくさんの命。犠牲になった罪のない人達。そして残された者たちの悔しさと悲しさ。



それを伝えるために上野先生はずっと心の中にしまってきた思いを語ってくださったのです。それを聞いた私達にできることは二度と戦争を繰り返さないこと。そして戦争は嫌だとはっきり言うことではないでしょうか?


【2007/09/29 19:25 】 | 児童書 | コメント(0) | トラックバック(0) | page top↑
水の伝説
水の伝説水の伝説
たつみや 章 藤田 新策

講談社 1995-12
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東京の学校でイジメにあい、学校へ行けなくなった6年生の光太郎は山奥の小さな村に山村留学してきます。
寄宿先には龍雄という同級生もいて、面倒を見てくれたり、ヤマメ釣り、えさの虫取り、木登りなどいろいろなことを教えてくれたりしました。
光太郎は友達もできて毎日が楽しく過ぎていったのですが、実はのどかで平和そうで自然が豊かに見えるこの村にも危機が迫っているのでした。
大雨の後、増水した川で河童らしいものを助けたその夜、原因不明の高熱におそわれた光太郎の夢に届けられた不思議なメッセージ。
それは何を意味するのでしょうか?



川の上流。
人口四千人足らず。
深い谷を刻んだ山にぐるっと囲まれた林業と農業の村。
田んぼや畑が作れる場所では稲や麦やお茶や野菜を作り、山はどれも民家のある山すそから尾根まで植林した杉かヒノキで覆われている。



まるで私の村のことのようです。
(人口はもうちょっと少ないですが・・・)
「白水村」という名前までなんだか似ていて他人事とは思えないお話です。
自然が豊かというのはどういうことなのか、山を守るとはどういうことなのか、山に生きる私たちがまず知らなければならないと思いました。
ですからこの本は子どもだけでなく大人の人にもぜひ読んでいただきたいです。



主人公の光太郎君。
やさしくてけなげで大好きです。
傷ついた神様がただかわいそうで何とか助けてあげたくて泣きながらその目に刺さった矢を抜く場面では私も一緒に泣きました。
イジメにあい、自分には悲しいことや辛いことしかないと思っていた光太郎が、嬉しかったことや楽しかったこと、それにやさしくしてもらったことだってあったんだってことに気づき、自分にできることをしようと一生懸命になっている姿には強さを感じます。
やさしいことは強いことなんだって思います。



このお話には双子の神様が出てきます。
男同士の兄弟愛とか友情っていいなってちょっぴりうらやましく思いました。
【2007/04/07 21:26 】 | 児童書 | コメント(0) | トラックバック(0) | page top↑
夜の神話
夜の神話夜の神話
たつみや 章 かなり 泰三

講談社 1993-07
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小学6年生のマサミチは突然決まった引越しでおばあちゃんが住むド田舎で暮らすことになります。
コンビニもファミコンショップもビデオショップもCD屋も、模型屋も本屋もないと嘆くマサミチ。
店もろくにないし、学校は遠いし、クラスのやつらはダサくて幼稚。
勉強は遅れているし塾もない・・・とマサミチの愚痴は続きます。
(まるでうちの村のことみたい・・・)
自転車でかえるをひき潰しちゃっても「きしょくわるい」としか思わないジコチュウなヤツです。(と私は思います)
そのマサミチがふと寄り道したお宮で白いはかま姿の青年に呼び止められ、なりゆきで食べてしまった「さとりまんじゅう」
その効き目でマサミチは家霊(イエダマ)のヨネハラさんや動物、虫、木などの言葉がわかるようになります。
一方、パパの勤める原子力発電所では恐ろしいことが起こっていました。
そのせいで大好きなスイッチョさんの命が・・・。
スイッチョさんの命を救い、危機を食い止めることがマサミチにはできるのでしょうか?



原発事故を扱ったお話で、実際にあった事故を思い出します。
「原子力発電は夢のエネルギーで現代文明をささえる最先端の産業。安全に使いこなせる技術も出来上がっているんだからみんなの役に立つ立派な仕事なんだ。」
そう思っていたと言うスイッチョさん。
現場で働く人々でさえ知らせれていなかった放射能の恐ろしさ。
人間が制御しきれない力は使わないほうがいいと身をもって教えてくれたスイッチョさんとの別れの場面では子ども達に読んであげながらぼろぼろ泣いてしまいました。



ジコチュウのアンキ(暗鬼・自己中心で他を思いやる気持ちを持たない者。欲が深くて、自分の欲を満たすことだけしか考えられない心)だった現代っ子のマサミチが、自然や生き物達の声に耳を傾ける心やさしい少年に変わっていく姿が印象的でした。
マサミチがスイッチョさんの思いを継ぐような形でまとめた夏休みの自由研究「夢のエネルギー」は実現できるのかな?
できたらいいなと思います。
このお話にはいろいろな神様や家霊さんたちが出てきますが、私はヨネハラさんが大好きです。
【2007/04/07 20:55 】 | 児童書 | コメント(0) | トラックバック(0) | page top↑
ぼくの・稲荷山戦記
ぼくの・稲荷山戦記ぼくの・稲荷山戦記
たつみや 章 林 静一

講談社 1992-07
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先祖代々、裏山の稲荷神社の巫女をつとめるマモルの家にやってきた下宿人、守山さん。
腰まで届く長髪に和服の着流し、好きなものはアブラゲ・・なんて変な人と最初は思ったけれど、その不思議な魅力にマモルはしだいに惹かれていきます。
そしてレジャーランド開発のために破壊されようとしている稲荷山と古墳を守ろうと立ち上がった守山さんと行動を共にすることになったマモルは、その後加わった仲間とともに「ヒト・キツネ同盟」を結成し、小山を守ろうと必死に戦うのでした。



自然を守ることと人が生きていくこと、自然と人とのかかわりはとても複雑で、ただ「自然を守ろう」「環境破壊はやめよう」ではすまないことにあらためて気がつきました。
それでも必死に戦うマモルや守山さん、それに仲間に加わった鴻沼さんが素敵です。カッコいいです。
命をかけて戦った守山さんと初音さん(誰のことかはヒミツ)の姿は本当に悲しかったけれど、最後にとてもあたたかい気持ちになれました。
よかったねって。
マモル達は本当に負けたわけじゃないです。
これからです。
コンクリートで固められた石畳の道からも草が芽吹いています。



自然を守ってやろうなんていうのは思い上がりで人が自然に守られて生きている。
自然を守ってやるんじゃなく、自分たち自身を守るために自然には今のままでいてもらわなきゃならない。



という言葉が印象的でした。
【2007/04/07 20:29 】 | 児童書 | コメント(0) | トラックバック(0) | page top↑
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